2015年のクラウド普及率は未だ15%。普及の障壁を探る。

2015年10月27日

クラウドコンピューティングという言葉が界隈を賑わして幾星霜。世間はやれAWSだSaaSがどうだのBaaSがこうだのということでサービス事業者の激戦は続いている。
一方で利用者側の実態はどうなのか。当社であればリモートで動いているという企業特性上全てのファイルはクラウドへ上がり、会議もドキュメント管理も全てクラウドサービスを利用している。さながらまだオンプレミスで消耗してるの?といった塩梅だ。
しかし、そのような形態の企業はまだ珍しく、全社的なシステムにおいては尚更パッケージを独自にカスタマイズしたオンプレミス運用を会社の方が多いのではないだろうか。

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アイティメディア社が企業のIT担当者に対して行った「クラウドサービスの利用状況」に関する調査によると、8割の企業において何らかのSaaSを利用していることが分かった。
対してAWSやGAE、Microsoft Azureなどに代表されるIaaSでは利用率は約4割にとどまっており、半数以上の企業において全社的なクラウドサービスの導入は未だ進んでいないように思われる。
SaaSについてはGmailなどのクラウドメールサービスの利用率が5割程度、グループウェア、オンラインストレージ、eラーニングと続き勤怠管理システムが約19%の利用率となった。

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また、これらのクラウドサービスの導入は全社的な導入ではなく業務部門ごとの導入が目立つ。
1位はIT部門で約75%。そこから人事・総務、経営層・役員と続くが、営業・販売部門や製造・開発部門においては導入率が10%を切っており遅々として導入が進んでいない。

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販管システムや製造管理システムなど、システム化することにより製造現場における業務効率の改善へ繋がるシステムは多くありそうではあるが、製造管理システム(MES)などでは一般化が難しいためにパッケージしにくいというバックグラウンドを持っている。
従前はオンプレミスでプロプライエタリなソフトウェアで、パッケージを組み合わせたり独自にカスタマイズしたりという形での導入が進んでいた背景がある。
しかし、一方で全体を通した評価としてはフルスクラッチで開発をした独自システムの方が高くなるという傾向にあり、ここがSaaSのような形で一括提供が難しい理由なのではないかというように思われる。

クラウドサービスの普及は本当に進んでいるのか

総務省が発表している平成26年度版の情報通信白書においては何らかのクラウドサービスを利用していると回答した企業の割合は33.1%であり、中でも全社的に利用していると回答した企業の割合は15%にとどまっている。(※アイティメディア社の調査結果はIT部門の担当者を対象としており、結果に対してバイアスがかかることは致し方がなく、こちらのほうが普及率という観点では正しい数値であると考えられる。)
また、アイティメディア社の調査にある、「オンプレミスとクラウドサービスにおいてどちらが安全か」という点において「オンプレミス」と回答した企業が25.2%で「クラウドサービス」と回答した企業が16.6%に留まるなど、利用実態を如実に表した結果となった。
それと、特筆すべき事項として「どちらとも言えない」が58.2%と約6割に上っており、クラウドサービスに対する理解の遅れを露呈している。

クラウドサービスに対する不安や懸念として最も高いものはセキュリティ(不正侵入などの脅威)のようで、全体の65%もの企業がそう回答した。
そこから安定性や継続性(可用性の観点)、データを外部に預ける心理的不安、サポート体制と続く。
データを外部に預ける心理的不安においても約5割の企業が「ある」と回答しており、サービス事業者のより明快で丁寧な説明が求められる。
一方でクラウドサービスの選定基準は月額費用、可用性、堅牢性、運用負荷となっている。月額費用というのも運用に掛かるコストは何もシステム利用料だけではないわけで、やはりシステムを移行するとなればその際のシステム移行費に、社員教育費も掛かる。導入して数年はIT部門に対する問い合わせも増えることだろう。それらのコストを考えてもなお数年で採算に合う価格設定である必要がある。

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AWSなどのIaaSではSLAを制定して可用性の担保などを行っているが、一方で少し前にクラウドサービスの利用規約が問題になることがあった(Google Driveの利用規約など)。
企業におけるITサービスの選定においては大きな障害であることは間違いなく、また内資ではなく外資がホストしているサービスが多いという現状も有り、コンプライアンス規定や情報資産の取扱規程などがある企業においては導入が難しい可能性があることは否めないだろう。

以上のことから、一部の企業形態・事業形態を除き自社の管理コストを考えるならばクラウドサービスに預けたほうがコスト削減及び業務効率の改善へ繋がることは明白だ。
しかし、一方でIT担当者でさえ理解が進んでおらず、全社導入となれば社員教育のコストなどが嵩むため目先のコスト管理ではオンプレミスのほうが安いという現状がある。
また、現場にとって見れば入力系の作業が増えることにつながり管理部門など全体を見ればコスト軽減になることであっても、現場に対する負担増に繋がることから社内調整が遅々として進まないということも背景にありそうだ。
SaaSに関して言うならばプロプライエタリ・ソフトウェアでオンプレミス運用を続けてきた企業からすればカスタマイズ範囲が不足しており自社の業務には適さないといった事情や、社内専用線と接続できないために導入に踏み切れないといった事情も伺える。

様々な問題が山積しているクラウドサービスではあるが何れにせよ年間5%程度の伸びではあるものの普及率は上がっており、今後も中小規模の事業者を中心に導入は進むと考えられる。自社に最適な社内システムとは何なのかを短期的目線で考えずに数年スパンの中長期的目線で捉えることがIT部門と経営者には求められている。

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