TV局各社が合同で番組無料配信アプリ「TVer」をリリース。どうなる若年層のテレビ離れ。

2015年10月26日

在京キー局5社(日本テレビ、テレビ朝日、TBSテレビ、テレビ東京、フジテレビ)が連携し、インターネット経由でテレビ番組を無料で配信するアプリ「TVer(ティーバー)」が本日10月26日にリリースされた。

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民放公式テレビポータル「TVer」とは

テレビ番組を放送後一定期間限定(基本的には見逃し配信を目的としているため、一週間から二週間程度限定となる模様)で放送局がアプリ内で動画を配信する。
対象となるデバイスはパソコン、スマートフォン、タブレットで、本日時点ではスマートフォンを対象としたiOSアプリ及びAndroidアプリの配信を確認している。
広告付きで配信することにより視聴料を無料化し、多くのユーザに利用を広げたい考えだ。

本アプリは「インターネットを使いテレビをよりおもしろくする」会社としてテレビ局各局と広告代理店各社の共同出資により設立された株式会社プレゼントキャストが運営している。
同社は今までにもテレビ局各局の所持するコンテンツをスマホシフトが進む若年層に対して訴求するため、番組表を始めとしたテレビ局各局が提供する番組情報やテレビ関連記事の紹介などを行うハミテレというアプリを提供していたが、
その取り組みを一歩前進させた形となる。

なお、サービス開始となる本日は各局から10コンテンツ程度、合計60コンテンツ程度の配信がなされている。

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また、同アプリは番組名は勿論のことながら出演しているタレントやジャンル、放送日などから番組を検索することができるうえ、タレント情報ページではそのタレントが出演している番組を一覧で表示させるなどの機能を搭載している。

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テレビ東京とフジテレビは自社で独自の配信アプリを所有しているため、そこにリダイレクトされる模様で、またフジテレビの場合は事前にWebページが開きアンケートに回答する必要がある。
この点においては使いにくいと感じるところではあるが、権利関係なども絡むため難しいのだろう。また、権利関係といえば製作委員会方式を取っている番組が近年アニメ以外にも出てきており、そういった番組においてどのように権利処理をするのかという点でも興味深い。
本アプリは各局の様々な意味でフォーマットのデファクトスタンダードとなりえるのだろうか。

見え隠れする代理店の思惑

ユーザにとっては見逃した番組を公式が合法的にそれも無料で配信してくれるということでたいへん助かるアプリと映るかもしれない。
しかし、その後ろには本アプリを開発したプレゼントキャスト社ならではの開発理由が見え隠れする。
現在、各社は日テレオンデマンドなど見逃した視聴者を対象として無料、または有料で配信している。こうした事情からテレビ局側からすれば自社のプラットフォームに載せておけばある程度の売上高は確保できる。
例えば本取り組みには参画していないものの、NHKなどではここ数年、年間数億円の黒字を計上しており全体から見ればまだ小さなビジネスではあるが、着実に数字を伸ばしつつある。

そんな中、TVerのように見逃し配信を専門に取り扱うプラットフォームを開発したとは何を意味するのか。
それは、各社のコンテンツを一括して吸い上げることにより各局のCMフォーマットを一本化し、販売に関しても従来バラバラに販売していたものを一括で販売できるようにすることで販売効率を上げようというものだ。
更には各局のコンテンツをラップして配信することにより、各ユーザや全体としての検索結果、視聴履歴に対する属性情報などを一括で取得し統計データとして分析することにより、ビッグデータとしての精度を高め番組制作やCM制作に反映させる狙いもあるだろう。今現在、Webやアプリの利用データは現在テレビ局各局が独自に保有しているが、それを一本化することによりビッグデータとしての精度は確実に上がる。
また、テレビ番組のようにプッシュ型コンテンツではインタラクティブなコンテンツ設計が難しいという現状が合ったが、こういった挑戦はその牙城を崩す一歩にもなり得る。

そういう意味ではテレビ番組とCMの未来を決める実験的プロジェクトというように捉えることもできるのではないだろうか。

どうなる若年層のテレビ離れ

運営会社のプレゼントキャスト社が警鐘を鳴らす通り、日本人のテレビ離れは深刻だ。株式会社博報堂DYMPの発表する「メディア定点調査2015」の調査結果では、全年齢を対象とした1日あたりのメディア総接触時間(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、パソコン、タブレット、携帯電話/スマートフォンへの接触時間の合計)は2010年の約347.9分から382.7分と約35分増えている。
にも関わらずテレビ及びラジオの総接触時間は201.5分から181.8分と19.7分の減少を見せている一方で、タブレット及び携帯電話/スマートフォンの総接触時間が75.7分増えており、テレビ離れは全年齢で見ても広がっている。

特に若年層(15歳~19歳)においてはタブレット及び携帯電話/スマートフォンの総接触時間が164.7分と総接触時間である357.3時間に対して約46%ものあいだスマートフォンなどに触れていることとなる。
20代女性においては全属性中最長の総接触時間を有していながらも、その過半はパソコンやスマートフォンなどのモバイル機器によるインターネット接続が主要であり、またテレビやラジオといった従来型メディアの割合は年齢を重ねるに連れ大きくなる傾向にある。
このような調査ではよく見る結果であり、想像も容易ではあったが、いずれにせよ現在の若年層をおざなりにしておくと将来的には従来型メディアに接触する人間が単純計算では徐々に減っていくこととなる。
これは一種のパラダイムシフトであり、止められない変化とは思われかもしれないが、その価値観に真っ向勝負を挑もうとするのがこのアプリであると言えるだろう。

いずれにせよ、「テレビ番組というコンテンツにはまだ価値があり、「テレビ」といった箱で視聴する機会がないだけである。」という従来型メディア側の主張を試す一つの試金石になることは間違いない。

目的の1つであると想定される我々若年層が果たして本アプリを使ってテレビ番組を視聴するかという点においては、それはまた暫く時間が経ってからデータを取ってみたいと思う。
筆者個人としてどうかと言われると、興味がある番組は全て録画されているので、利用するポイントでいうならば今まで接点がなかった番組との出会いの場といったところだろうか。
可処分時間が年々減少傾向になる現代人において、そこへ時間を割くことができる人がどれほど居るのかはさておきとして、使う場面が想像できないわけではない。YouTubeに代表される動画共有サイトに多くのテレビ番組がアップロードされて存在する以上わざわざプラットフォームを入れ替えるか(違法状態と認識しているのかどうかはさておきとして)という観点においては疑問が残るものの、どうせなら一定数クオリティの担保されたものをみたいといった需要があることは確かだろう。

動画配信という側面を切り取るならば、民放各局のドラマなども配信するHuluやAmazonプライム・ビデオ、Netflixなどの外資サービスに対し、どのようにして対抗するのかもキーポイントとなりそうだ。
無論、無料というフレーズは大変魅力的ながら、既に他の付加価値を見出して契約をしているユーザをどう囲い込むのか。もちろんサービスの思想や目的は違えどエンドユーザにはあまり関係がない。
どのようにしてこれらのサービスに対抗するのか、はたまた棲みわけるのかは引き続き注視したい。
また、本アプリは民放ドラマやバラエティ番組の面白さを、普段接点がない若年層に対してスマートフォンアプリを使うことでアプローチをし、現段階においては最終的にテレビでのリアルタイム視聴を促すことも目的のひとつにしていると考えることもできる。
他にも、TVerが普及することにより従来YouTubeなど動画共有サイトへアップロードされたものを視聴するユーザに訴求することができれば、違法状態にあるコンテンツではなく公式が配信するコンテンツを合法的に視聴させることができるようになるなど様々な観点から評価されるべき本取り組みであるが、果たして群雄割拠の動画配信サービス戦国時代においてどのような立ち回りをするのか。

まずはその第一歩を静かに見守りたい。

 

参考リンク

民放公式テレビポータル「TVer」公式サイト

iOS AppStore

Android Google Play

 

 

本日時点で確認されている主要コンテンツは以下のとおり

日本テレビ

「徳井と後藤と麗しの SHELLY が今夜くらべてみました」(毎週火曜午後 11 時 59 分放送)
「有吉反省会」(毎週土曜午後 11 時 30 分放送) ほか

テレビ朝日

「科捜研の女」(毎週木曜午後 8 時放送)
「遺産争族」(毎週木曜午後 9 時放送) ほか

TBSテレビ

「下町ロケット」(毎週日曜午後 9 時放送)
「ニンゲン観察バラエティ モニタリング」(毎週木曜午後 7 時 56 分放送) ほか

テレビ東京

「所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ!」(毎週金曜午後 9 時放送)
「ゴッドタン」(毎週土曜深夜 1 時 45 分放送) ほか

フジテレビ

「無痛~診える眼~」(毎週水曜午後 10 時放送)
木曜劇場「オトナ女子」(毎週木曜午後 10 時放送) ほか

三上洋一郎

三上洋一郎

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株式会社GNEX代表取締役 当学園の理事長も勤めております。